イギリス最大の生物医学研究支援ファンドであるウェルカム・トラストの出資額が大幅に上昇することになる。21日、イギリスに拠点を置くこの慈善団体は、今後5年間で50億ポンド(約9,250億円)を科学の研究や普及活動に出資することを発表した。過去10年間では60億ポンドを出資してきており、2014年は7億2800万ポンドであった。この過去の出資のペースから大きく増加することになりそうだ。
「比較的経済的に緊縮かつ困難な時に、我々ウェルカム・トラストが科学への投資を増加するということは、とてつもなく重要なことなのです」とディレクターのジェレミー・ファーラーは述べている。おそらく今後10年間では、ファンド創設以来に出資してきた110億ポンド以上を出資することになるだろうと、彼は付け加えた。
彼らは財産をどのように使用してきたかを公表していなかったが、将来のアクションとして新たに明らかにすることを計画している。ファーラー氏は「我々がいままでしてきたこと以上のことを、これから実施するのです。」と述べている。これには、薬物体制性の感染症との闘いや予防接種のサポート、そして患者の医療記録のデータマイニングといった”eHealth”への出資なども含まれている。ウェルカム・トラストはどの領域に投資すべきかを検討する一連の「フロンティア会議」を設けている。「これは大きな問題について社会と対話するものなのです。」とファーラー氏は付け加えた。
このような大きな出資額の増加は、ウェルカム・トラストの180億ポンドにも上る寄付の実績によるところが大きいとファーラー氏は述べている。2013年から2014年にかけて、運用資産価値は10%以上、額にすると約17億ポンド成長し、前年も13%の成長であった。
この多額の資金を融資してもらえるかもしれないという科学者にとって思いがけない幸運は、イギリスの科学への資金提供の財源が危機に瀕しているときと同時にやってきた。11月25日に、イギリス政府は2016-17年度に資金提供の優先順位を明らかにする準備をしている。多くの研究者にとっては、科学への資金提供がカットされる、もしくは停滞することに不安を感じているのだ。
ファーラー氏は今回のウェルカム・トラストの大幅な出資額の増大の発表と来月の政府の支出の見直しとに関係はないとしている。また、ブリストル大学の細胞生物学者であるデビッド・スティーブンは、ウェルカム・トラストによる豊富な援助は、政府や他のファンドの代わりになるものではないと考えている。「ウェルカム・トラストの出資の増加が、他のファンドが彼らが出資する額を減らす理由にならないことを、私は願っています。」とも述べている。
また、スティーブン氏は今回の出資額の増加は、ウェルカム・トラストが感染症のような分野において、世界的な影響力を増加する傾向にあるのではないかとの見解を示している。「これはイギリスだけでなく、世界的に見ても、生物医学分野の研究にとって素晴らしいニュースです。」
《参考文献/サイト》
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