ジャガーは古くから地球に生息しているネコ科の哺乳類だ。彼らは300万年前にユーラシアで進化したと考えられており、最終的には南イングランドからネブラスカ州、そして南アメリカまで生息域を広げた。現在の生息域は南アリゾナからアルゼンチンにかけてであり、氷河期と比べればほんの僅かな地域にしか生息していない。また、縮小したのは生息域だけではない。更新世の祖先と比べて、現代のジャガーはおよそ15%近く小さくなったという。それでもジャガーは生き残った。アメリカライオンやサーベルキャット、他の捕食者は絶滅したにもかかわらずだ。どうしてかだろうか?
■ジャガーの食事について
生物学者のMatt Hayward氏はジャガーの食習慣と、ネコ科の動物の餌の好みが時代とともにどう変わってきたのかを調査した。公表されている25個の研究に記録されている3214体のジャガーに殺された動物から、Hayward氏と共著者たちはジャガーは好みにうるさいことが発見された。この大きなネコのメニューの種類は111種にも及んだという。そこには家畜の牛からネズミ等の齧歯類、サルやカメも含まれていた。しかし、ジャガーについてよく書かれている内容とは正反対に、彼らはいついかなる時にどんな動物でも狩りをする万能選手ではないようだ。
ジャガーの食事で最も一般的に見られたのは、カピバラ、野生のブタ、カイマン、クビワペッカリー、ココノオビアルマジロ、オオアリクイ、ハナジロハナグマであった。これらの種はジャガーの食事の16~21%を占めていたという。また統計データは、ペッカリー、マザマジカ、オオアリクイやアカハナグマを含む獲物が、ジャガーの射程範囲にいるときには85%の割合で捕食されたことを示した。さらに解析を実施したところ、動物学者たちはジャガーが特にカピバラとオオアリクイをターゲットにしていることを発見した。一方で、ジャガーはバクをまったく捕食せず、霊長類を捕食することもほとんどなかった。
ジャガーはヒョウよりも屈強だ。しかし、彼らは捕食できるであろう獲物の範囲の中から、より弱い方に属する狭い範囲の獲物を好んで捕食する。このことは体が小さくなってしまった理由と関係があるかもしれない。ジャガーはバクを単独で捕食できるほど大きくはない。また、シカのような中程度のサイズの獲物は人間の狩りによって、それだけに頼るにしては少なすぎる獲物になってしまった。そのため、ジャガーはより小さな獲物を選り好んで狩るようになったと考えられる。Hayward氏はこれを「準最適」と呼んでいる。
このような変化はジャガーにだけ起こったのではない。コヨーテもまた同じような変化を辿った。好戦的なイヌ科の動物も氷河期にはかなり大きかったという。彼らの競争相手がいなくなった時、コヨーテは小さくなり、ひどく人間の影響を受けた世界の片隅に住むようになったのだ。
順応性がこれらの肉食動物の違いを作り上げた。ジャガーはもはや世界中をうろつくことはなく、最近IUCNのレッドリストに「準絶滅危惧種」として登録された。しかし、他の多くの肉食動物が滅びた場所であっても、彼らは獲物を変えることで生き残るだろう。「ジャガーは選択的に小さい獲物を狩るという戦略によって、大量絶滅から生き延びたのでしょう。」と、Hayward氏達は記述している。クーガーの化石の記録も同様のことを物語っている。他のネコ科の動物が食べることがない死骸の一部を食べることで、マウンテンライオンはタフな時代を生き延びたのだ。
氷河期に一時代を築き上げた動物たちが絶滅した理由はまだ議論中だが、生き残った動物こそ我々が今まで以上に調査すべき対象であるといえる。ジャガーをはじめ、彼らがどうして現代まで生き残ったのか、そこにこそ他の種が生き残れなかった秘密があることだろう。
《参考文献/サイト》
- “How Jaguars Survived the Ice Age”. National Geographic. (アクセス日:2016/1/26)
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