働きアリと兵隊アリ
働きアリは、種類によってはさらに2種類に分けられることがある。例えばオオアリは体の小さな働きアリだけでなく、体が大きく逞しい兵隊アリも存在する。兵隊といっても戦闘に従事するアリではなく、小さな働きアリが運べないような大きなエサを運んだり、屈強なアゴで解体したりするのが仕事だ。兵隊アリは、アリのコロニーが数十から百匹を超えたあたりから出現する。大きな兵隊アリを育てるには多くのエサと時間がかかるため、コロニーが小さいうちは体の小さな働きアリをたくさん育てるように専念し、コロニーの拡大を図っているという。コロニーが大きくなり、安定してエサを獲得できるようになって初めて、兵隊アリを育てだすのだ。
アリは転職できない?
兵隊アリは産まれた時から生涯ずっと兵隊アリとして生きていく。そう思われていたが、科学者の手にかかればそうでもないようだ。ある種の化合物、それはアリのエピジェネティック(DNAの配列変化によらない遺伝子発現を制御・伝達するシステム)な構成を操作してしまう物質、をアリの脳に注入することで兵隊アリの生まれ持った役割を変化させることに成功した。「これは長期的、恒久的な変化を起こすことができるのです。」とペンシルバニア大学のエピジェネティクス研究者であるシェリー・バーガー博士は述べている。しかし、役割の変化は起きたものの体格の変化は起きず、兵隊アリは依然として大きな体を維持している。また、役割の変化が起こるのは、産まれてから数日以内の兵隊アリに限ることであり、その理由はまだわかっていないという。この研究はのサイエンス誌にて発表され、共著者であるニューヨーク大学の生化学者であるダニエル・ラインベルガー博士は、エピジェネティクスがアリにどのような影響を与えているのか、さらに調査したいと付け加えている。そして、女王アリがなぜ他のアリよりも寿命が長いのか、といった疑問の解明も目指すようだ。
《参考文献/サイト》
- “Ants Can Change Their Roles, Study Finds”. The New York Times. (アクセス日:2016/1/2)
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