2015/11/28

太陽は火星の大気を吹き飛ばす


火星の大気には、もはや過去の面影はない。猛烈な太陽風が、ガスの分子を火星から剥ぎ取ってしまったからだ。NASAのMAVENプロジェクトによって新たな火星大気の損失の観測も実施された。その詳細な観測は、火星がどのようにして現在の冷たく乾いた砂漠の惑星になったかを究明する上で役に立つことだろう。かつて数十億年前は水が迸り、温暖な気候をしていたのにもかかわらず。
「大気の宇宙空間への損失は、たとえそれが支配的なものとまでは言わないまでも、気候変動は著しく進行するでしょう。」MAVENプロジェクトの研究責任者であるコロラド大学ボルダー校のブルース・ジャコスキー氏はこう述べている。

火星の大気の消滅におけるキーファクターは地球とは異なっている。火星は地球と違い磁界を持っていないからだ。そのため、火星は太陽風から自らを守る術がないのである。火星は毎秒100グラム程度の大気を失っていると、MAVENプロジェクトの研究者たちが2015年11月6日にScience誌に報告した。


太陽は着実に火星の大気を除去しているが、一方で太陽フレアが発生すれば一度に大量の大気のかたまりですら吹き飛ばすことが可能だ。3月に発生した太陽フレアでは、通常のおよそ10倍を超えるイオンが火星から吹き飛ばされたという。このようなフレアは太陽が若くより活発に活動していた過去においてはおそらく頻発しており、より強烈なものであったため、火星の大気の大半は剥ぎ取られただろう、とジャコスキー氏は言及している。火星に人類が住むようになるためには課題は多くあるが、太陽との戦いはかなり熾烈なものになりそうだ。


《参考文献/サイト》
A defenseless Mars is losing its atmosphere”. Science News.  (アクセス日:2015/11/28)

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