2015/11/27

ゲノム編集によるマンモスの復活


化石に残存する太古のDNAと聞いた人は、いつだって最初にこう聞くものだ。「恐竜は甦るの?」 数百万年前に死に絶えた恐竜は、いまや化石としてその骨格を眺めることしかできない。琥珀に閉じ込められた蚊を使えば、とはよく聞くが、実際のところ琥珀の中ではDNAは完全に破壊されてしまう。DNAなしではジュラシックパークは夢物語であろう。
しかしマンモスは恐竜とは違う。数千年前に絶滅はしたが、凍てついたツンドラに彼ら当時の姿をほぼ維持したまま保存されていたからだ。これはDNAを再生できることを意味するだろうか。
ドリーのように、マンモスのクローンは作成可能か? 冷凍保存されたマンモスの体のどこかから核DNAを手に入れ、それをアジアゾウのような近縁種の除核した受精卵へと注入する。そして出来た胚を代理母に着床させ2年程経てば、マンモスの誕生だ。しかし細心の注意を払って冷凍保存しない限り、これはh可能であろう。DNAはバクテリアや水、温度の変化等によってダメージを受けてしまうため、ごく小さなDNA断片しか手に入らないだろう。かつて誰も冷凍マンモスから損傷のない細胞やDNAを発見したことはない。おそらくこれからもだ。つまり、マンモスのクローンも、いまのところ実現できそうにはないということだ。 マンモスのゲノムの再構築は可能か? マンモスのゲノムをデジタル解析し、化学的に再構築したものを、アジアゾウの受精卵に挿入することはできるだろうか?理想的な標本から入手したDNAでさえ、残念ながら断片化され、微生物のDNA等に汚染されてしまっている。それらの断片からどれがマンモスのDNAかを見分けることは難しいだろう。しかし、現存する象のゲノムを比較対象として使い、オリジナルのマンモスのゲノムを推定するという、なかなか良さそうな研究はできるだろう。シークエンシングに一部成功し、マンモスの4億塩基対におよぶゲノムを組みなおしたという報告も最近されたところだ。しかし、ヒトゲノムもそうだが、すべてのシークエンシングは不十分なものであり、おそらく何か重要な要素が抜けている。ゲノムの再構築は実用的なものにはなかなか成り得ないだろう。この方法でもマンモスを再誕させることはできないと思われる。 ではマンモスを設計することはできるだろうか? 現存する象のゲノムを用い、カットアンドペーストによってマンモスにとって重要な遺伝子を象のゲノムに埋め込んでいく。そして、マンモスに求める特徴を有したゲノムを作り上げるのだ。いまでは、神の技術ともいわれるゲノム編集技術がある。CRISPR Cas9 を用いれば象のゲノムに合成したマンモスの遺伝子を挿入したり、交換したりといったことが可能だ。この実験はハーバードのジョージ・チャーチ教授のチームによって行われた。彼らはゲノム編集によって、長い毛や余分な脂肪、寒さに適応した特殊な赤血球といったマンモスの特徴に関わる14種の遺伝子を置き換えた。もし交換すべき正しい遺伝子が分かり、交換した遺伝子がすべて機能している象のゲノムを入手し、異種間でのクローニングという困難なプロセスを経て、異種の代理母に産ませることができれば、極寒の中でも生きることができるマンモスに似たアジアゾウを誕生させられるだろう。 なぜ絶滅した動物を生き返らせようとするのだろうか?彼らは動物園では生きられない。しかし野生において、彼らは失われた生態的相互作用を再生し得るのだ。また、絶滅危惧種を守るためにも応用できるかもしれないという。最新のゲノム編集技術によって実現できることは増えることだろう。果たしてジュラシックパークが現実になる日は来るだろうか。


《参考文献/サイト》
  1. De-extinction science”. Revive & Restore.  (アクセス日:2015/11/27)

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