2015/10/06

数学への恐怖を克服せよ


 スタンフォード大学の研究者たちの報告によれば、子供の数学への恐怖や不安は、一人ひとり個別に指導することで和らげることができるようです。
 数学の問題に取り組む際に不安を感じるのは、何も数学嫌いの子供だけではなく、数学が好きな子供でも感じています。もちろん、人によって不安の強弱はありますが、数学への不安は、学生時代だけでなく生涯にわたって付きまとう物でもあります。その不安のせいで、その後数学や数学を利用する科学の勉強を諦めてしまったり、社会人になっても数学の専門性が必要なキャリアへの挑戦を思いとどまってしまう傾向もあるようです。


 今回、子供たちの数学への不安を解消するべく、例えば蜘蛛に対する恐怖、というような恐怖症を克服するためのセラピーをもとにテストを実施しました。対象は第3学年の児童46名で、数学への不安をスコア化し、それを和らげることができるかを調査しています。(スコアの出し方は元記事に未記載のため不明。)
 まず、会うう学への不安のスコアの平均値をを出し、それを境に不安が高いグループと低いグループに子供たちを分けます。また、fMRI (functional magnetic resonance imaging) によって脳の反応も確認しています。その間、簡単な足し算の問題を解いてもらっていたようです。それによると、不安のスコアの高い子供たちは恐怖や嫌悪といった感情と関連性の高い「扁桃体」が活性化されていることがわかりました。
 その後、子供たちは8週間にわたって、足し算や引き算の問題を含む、22のレッスンから成るプログラムを受けました。この間、教師は子供たち一人ひとりに個別でレッスンを実施しました。レッスン受講後、再度検査を実施たところ、数学への不安が高いグループの子供たちのスコアは下がっていることが確認されました。(もともと低いグループにいた子供たちは変化なかったようです。)また、扁桃体も活性しておらず、個別指導によって不安や恐怖といたものは軽減されたことが示唆されました。なお、個別に指導することが、なぜ不安の軽減をもたらすのかは今後実験をする予定のようです。

 「国際数学・理科教育動向調査の 2011 年調査」によりますと、小学4年生時点では、算数が好きな生徒の方が多いようです。中学2年生では数学が好きと答えたのは39%になり、嫌いな生徒の方が多くなるようです。数学の好き嫌いが不安の強弱には直接結びつきませんが、不安を取り除くことで数学に積極的に取り込んでくれる生徒が増えれば、この調査の結果も変わるかもしれません。個別指導となると、優秀な教育者の数を確保しなければならない等問題はありますが、今回の研究および今後の研究によって、より良い教育プログラムが開発されることに期待したいものです。


《参考文献/サイト》
Tutoring relieves math anxiety, changes fear circuits in children”. Science Daily.  (アクセス日:2015/9/29)

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