2015/10/12

ノーベル数学賞は存在しない


2015年のノーベル賞が発表された。日本人が受賞したというニュースもあるが、国籍に関わらず、偉大なことを成し遂げた方々は素直にすごいと思う。もちろんノーベル賞を受賞したかどうかに関わらず、素晴らしい科学者はたくさんいるだろう。人類のために、という大正義な目標を持っている方もいれば、莫大なお金のために頑張っている方がいても不思議ではない。
でもきっと科学者であるならば、自身の仕事を続けていく駆動力の根底にあるのは、ただ純粋なる好奇心なのではないだろうか。むしろそうであってほしい。とんでもない権威を持った大教授であっても、自身の研究について語るとき、子供みたいに、楽しそうに目をキラキラ輝かせているのが、私は好きだ。苦悩は多くあれど、研究者という仕事は本当に素敵だな、とつくづく思う。(研究者を目指しておけばよかったなー、という後悔とともに。)

ノーベル賞には数学賞がない。どうしてだろうと思い軽く調べてみたものの、アルフレッド・ノーベルの恋敵が数学者だったからとか、どうにも噂の域を出ない説がいろいろ語られている。結局、本当のところどうなのかは不明だが、数学好きとしては何だかこの時期は寂しくなるものだ。しかし、数学者を称える偉大な賞も、もちろん用意されている。4年に一度、顕著な業績を上げた数学者に授与されるフィールズ賞だ。ただし40歳以下という条件がある。40歳?少し早すぎないだろうか。かの有名なフェルマーの最終定理を証明したアンドリュー・ワイルズ教授や、まだレビューが完全に完了していないとはいえ、数論において最も重要ともいわれるABC予想を証明した望月新一教授も、40歳を超えてから偉業を成し遂げた。天才数学者ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディは"Mathematics is a young man's game."と言ったそうだが、そうとも言い切れないであろう。

年齢制限のない賞はないものかと思っていたら、2003年からアーベル賞というものがあるようで。ノーベルと1文字違いなのはたまたまで、ノルウェー出身の数学者ニールス・アーベルの生誕200年を記念して出来たそうだ。こちらは年に1回受賞者が発表され、年齢制限もなく、賞金もノーベル賞と同じ、約1億円である。(ちなみにフィールズ賞は約200万円)フィールズ賞の方が歴史もあるため、やはり数学者にとってはそちらの方が価値があるのだろうか、と勝手に想像しているものの、年齢制限のない数学賞が出来たことは喜ばしいことだと思う。ワイルズ教授は結局フィールズ賞は受賞できなかったが、代わりに特別賞が授与された。さて、望月教授には何か与えられるのだろうか。

かつてガリレオはこう語っている。
哲学とは、我々の目の前に横たわっているあの偉大なる書物 ―― 私は宇宙のことを指しているのだが ―― に書かれているのだ。しかし、まずその本に書かれている言語を学び、記号の意味を理解しなければ、その本を読解することはできない。この本は、数学的な言葉で書かれており、そこに現れる記号は、三角形、円、その他幾何学的な図形といったものだ。これらの助けなしに、この本に書かれている内容は一語たりとも理解できないであろう。これらなしには、暗闇の迷宮を虚しく彷徨うことになるのだ。

よく「宇宙は数学の言葉で書かれた書物である。」と要約しているのを見かける。むしろ人間が宇宙を理解するのに数学が必要だ、と言った方がいいかもしれない。無論、宇宙だけでなく、コンピューターや経済においても数学は必要不可欠だ。よく「数学なんて社会に出てから何の役にも立たないじゃないか。」と言っていた同級生が昔いた。どうにも全国の学校でいるみたいだが、そう言っていた彼に対して「お前なんて社会に出ても何の役にも立たないじゃないか。」と言った覚えがある。彼はいま何かしらの仕事で、きっと社会の役に立っているだろう。でも数学だって、社会に大いに貢献しているのである。ノーベル賞以外にも素晴らしい科学的業績はいくらでもある。私の好きな数学をはじめ、広くさまざまな業績が多くの人に伝えられるようになってもらいたいものだ。

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